霞神社宮司 森田勇二さんギャラリー

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この赤い画面、何に見えますか?
マグマ?果物の表面?もしくは胎内…?
実はこれ、葉っぱをモチーフに描かれた絵画なんです。
そして作者は、霞神社の宮司である森田 勇二さん。

霞神社の記事はこちらから

 
以前霞神社へ取材にお伺いした際、話の流れから「絵を描いているんです」とお聞きし、その場で絵の写真を見せていただいたのですが…写真からでも伝わってくるじわじわと身に迫ってくるような絵のオーラに、神社でこんなアーティストに出会うとは…とびっくり!
宮司さんも快く「是非今度うちのギャラリーへ来てください」と言って下さったので、早速後日ご自宅のギャラリーへと足を運んだのでした。

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「妻に言ってるんですが、もし自分の絵が火事で燃えてしまうようなことがあれば、
自分も一緒に火の中へ飛び込むってね()」(森田さん)
 
アトリエに描き溜めた絵が、溢れかえるように積み重なっていたのを一旦整理しようと、絵の保管庫も兼ねてと構えられたギャラリー。
あまり表に出されていないので知る人ぞ知る…ですが、絵を好きな人がいつでも見に来れるようにと無料開放されています。
 
関東出身の森田さんは、高原出身の奥様とこちらへ移住してきて、まずはえびの高原の雄大な景色に魅了されたそうです。そこで風景画などの写実的な油絵を描き続けていましたが、そこから段々と視点が狭まってきて、普通に描いても面白みを感じない…と、地面で朽ちていこうとする葉からインスピレーションを受け、次々と描き始めました。
現在ギャラリーに飾られている作品は殆ど《葉っぱ》をモチーフに描かれたものです。
 

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絵を接写したもの。元々は(絵画用の)ナイフのみで油絵を描いていたという森田さんの
独特の筆のタッチや色使いに、しばし見入ってしまいます…。
 
森田さん:変わった絵でしょ?説明があると葉っぱっていうのは分かるでしょうけど、なんの情報も無く見た方は「なんなんですかね…?」と不思議そうに眺めてらっしゃる。人の顔が沢山集まっているのか…とかいう方もいましたね。
基本的に葉っぱなんですけどね(笑) そう見ればわかるでしょう?
 
―そうですね。けど見ていると“葉っぱとして見る”という感覚では無くなってきます。見る人によって色んなイメージが広がっていくでしょうね…。
描く前に「こういうものを描こう」と思って描かれているのでしょうか?
 
森田さん:そうですね、いろんな面から触発される部分はあるんですね。
一番は色、かな。例えば夜中に布団の中で天井を見ていて、そこに光が差した時の色が何とも言えない…この世で見れないような色合いがあった時、それをいかにとどめておけるか。具現化、色彩化していくか…そういう作業はしていますね。
 
ふとしたことにヒントを与えられることは非常に多いですよ。夜中寝ているときにパッと起きて絵具を画面に置いたりして…日々絵との闘いです。
 
例えば同じ“赤”でもいろんな要素の赤があるんですよね。
それとのバランスが崩れるともう駄目ですよね。緻密に計算したような感じで、自分の中に入り込んだ色彩感覚がうまく出せた時に、良い絵になったんじゃないかな…という気がしますよね。

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 宮崎や小林で個展を開催したこともある森田さん。
現在は自分の創作意欲と真摯に向き合いながら日々制作に没頭されています。
 
森田さん: 画壇とかグループ組織の中に入ってやるというのは、私の性格としては駄目だということを一番実感しました。美術展に出展するにしても“賞を取るんだ”という、本来とは違う欲が出てしまう…。発表というのは作者の名前をいかに出すか、ということでしょ。そうではなく、表現をしたいんだと悟った時に、内に籠っていい絵が描けるようになってきたかなと思っていますね。
 
ギャラリーを開いて、近所の方たちも見に来てくれたりして、初めてこういう作品に触れるという人もいました。分野としては抽象画になるんですが
「へぇーそういうものなんですか。…じゃあどんな風に見てもいいんですね」
っておっしゃっていたりして。
私の絵を通して、こういった絵の世界に距離が近づいた人達がいるんじゃないかと思いますね。特に発信などしていませんが、好きな方がいればいつでも見に来て欲しいです。そういう方達と、絵も出会いたがってると思うんですよね。

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そんな風にお話をお聞きしながら…
いつもさりげなく側にいる奥様の存在がありました。
きっと奥様は、いつもこんな風に森田さんの創作活動を支えられているのだろうな、とてもいい関係なんだろうな~という雰囲気が、少しご一緒しただけでも伝わってきます。
 
森田さん:神社から帰って来ると、私はもう絵の世界に切り替わる訳ですよ。
するともう帰り際の寄り道とか買物、一切ダメなの(笑)
とにかく帰るんだと、5~10分の買い物に付き合えない訳ですよ…
それが直子(奥様)は嫌みたいですよ。
 
直子さん:ちょっと待ってて、トマト1個買うのに何で待ちきれんかねっ…て!
仕方ないから一旦自宅に送ってきて、それから私一人で買物に出るんですよ。
これがでも、ほんっとに無駄って思うの…(笑)

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森田さん:私にはそういう寄り道がムダなのよな(笑)
絵具を混ぜる油が生きているんですよ、固まったりしちゃいますからね。
その油を調合しながら…私の場合は3段階に分けて、さらさらの油・中間・どろどろの油、これを使い分けて描いているもんだから、一日間が空くだけでも全部予定狂っちゃうんですよ。

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こちらは森田さんの敬愛する画家・戸嶋靖昌さん。「とても素晴らしいですよ」と画集を
見せて下さる様子に、本当に絵がお好きなんだなと感じました。…にしても素敵な写真!!
 
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森田さん、直子さん、ありがとうございました。
 
ギャラリーに入ってすぐ「どうぞ、ゆっくり見ていて下さい」としばし時間をいただき、ひとつずつ作品の前に立って向き合っていきます。
どれも、とても美しい色彩と、得も言われぬ世界感。
絵の奥から感じる引力に心がどんどん引き込まれていくようです。
 
2時間近くここに居て、じーっと見ていく人もいますね」と森田さん。
どの絵からも《こういう風に見てほしい、こういうことを言いたいんだ》
というような主張は感じません。
《好きなように見て、自由に感じていいんだよ。今、あなたは何を想う?》
そんな風に語りかけてくれるような懐の深い作品たちと、
じっくり会話を楽しみたい。そんな気分になり、時間を忘れて見入ってしまう
という気持ちも分かるなぁ~としみじみ感じ入るのでした。
 
今後もギャラリーでは、定期的に作品を入れ替えて展示していくそうです。
ご興味のあるかたは是非、森田さんの作品に会いに行ってみてください。
きっと心に響く何かがあるはず…。
 
【森田さんのギャラリー】
宮崎県小林市大字細野2373-12
連絡先: 090-4989-5968(森田) ※ご連絡されて行かれたほうが確実です
 
 
 
奥様曰く、森田さんは“動物園の白クマ”だそう。
「部屋を行ったり来たりして…だから絨毯もそこだけすり減ってるんですよ」()
それだけ夢中になれることがあるって、素敵なことですよね。
 

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