神武の家

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高原町並木地区にある児童養護施設「石井記念 神武の家」
社会福祉法人 石井記念友愛社の施設として3年前に建てられました。
「天は父なり 人は同胞なれば互いに相信じ 相愛すべきこと」
という児童福祉の父・石井十次の残した言葉を基本理念に運営されています。
 
実はご近所にある施設なのですが、これまで身近に無い存在だったので気になっていました。そんな中、たまたま歯科の待合室でご一緒した青年が施設職員の方で「施設の事を地域の方々に知ってほしい、今度もちつき会をやるので良かったら遊びに来てください」とにこやかにお話しいただき…早速後日神武の家へ伺ったのでした。

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当日は雨により室内で行われたもちつき会。外の寒雨とは対照的に、部屋は熱気で大賑わい!
ボランティア団体の方々も駆けつけ、楽しい年末イベントとなりました。
 
当日は皆さんとても気さくに迎えて下さり、子ども達もワイワイ楽しそう!
「そ、がんばれ~!」「ちょっと柔いかも~!」
「ねったぼ(芋もち)にすればいっか~!」など、会話も杵も弾みます。
たくましく餅つきする男の子や、初対面の私にニコニコ話しかけてくれる女の子、
小さい子に「おいで」というと、ずーっと抱っこされています。
皆それぞれが個性的で、とてもかわいい子ども達でした。
 
その後改めて、主任の方に施設の事についてのお話を伺いました。
さっぱりとした雰囲気の、明るく元気な女性の丸目さん。
「忙しいとはいえ、私には休みがあるのでいいんです…」と話し始めます。
 
丸目さん:子ども達はここしかないから、ここから出ていけないんですよね。
私達は子どもと気持ちがぶつかっても、クールダウンして自分の部屋へ帰ったり建物からも出ていけるけど、子ども達は何があってもこの建物にしか居場所がないんです。
よく「覚悟を持って仕事をしろ」って園長から言われていました。
子供たちは何があってもここにしか帰れないという覚悟を持ってきているんだ、よく考えんといかん。職員が頑張っているんじゃない、子ども達が頑張っているんだ。それを支えるのがここの仕事だと。
 
―やっぱり計り知れないところがあるなって…。簡単に同情の気持ちを持つのも違うんだろうし。ただ、こういう環境で生きているっていうだけですもんね。
 
丸目さん:そう、よく可哀想って言われるんですけど、可哀想じゃないんです。
制限がある中でも、子ども達は精一杯楽しく生きているので…
本当に元気で明るい子達ですよ。
 

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―普段の子ども達の様子はどんな感じですか?
 
丸目さん:一般家庭と変わらないですよ。朝起きてこなくて「ごはんどうすんのー!!」って言いながらバタバタと学校へ行きますしね(笑)
一般的な施設って時間厳守なとこもあるんですが、うちはそういうの取っ払って「ごはんとお風呂どっちが先~?」みたいな。より家庭的な雰囲気があるのかなと思います。
「みんなで揃って食事」ていうのも基本はあるのですが、ここの園長は「普通さ、お父さん遅かったりとかするよね?」「朝も高校生が早いし、お母さんと二人で食べたりもするよね」って。何で皆で食べんといかんと?絶対ではないよね、何でそこにはめ込むの?って言う人だったので。
 

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つい最近急逝されたという園長先生。現在は主任の丸目さんが責任者ですが
今後、後任の園長先生が来られる予定だそうです。
 
―そうですよね、施設ってある意味そういうものだと思うんです。けれど園長先生のおっしゃることは、リアルな家庭のあり方であって…。
 
丸目さん:そうなんです、だから最初はNOルールで始まりました。
ある程度の日課はあるんですけど、それ以外のことは子ども達と一緒に考えながらやってきている感じです。
 
ー 一緒に考えながらって、いいですね。
最初お会いした職員さんが「地域の方々に知ってほしい」と話していましたが…
 
丸目さん:やっぱり施設とはいえ、ここの地域でずっとやっていくというのがあるので。子ども達はそれぞれ家庭の事情があって施設で暮らしているだけなんですが、結構こういう施設って“悪い子が入る”みたいなイメージを持ってしまう人もいるんです。
なので開設前は地域の理解を得るのに時間が掛かることもありましたが、実際に来てみたら、近所の人達も「すごくいい子達だね~」って言って下さって。
部活にも入らせてもらっているし、何とかやってるかなぁ…という感じはありますね。
 
― 私自身にはそういうイメージはありませんでしたが、そういった誤解は少しずつ解いていけたらいいですね。それぞれの家庭の事情があるのはみんな一緒だし、むしろがんばって生きているんだから。
 
丸目さん:そうですね。ただ高原町は運よく幼稚園なんかでも受け入れが良くて、学校関係にも同業者がいたりと、周囲に理解のある人に恵まれていて助かっています。近所にも温かく接して下さる方達がいるので、本当にありがたいですね。

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収穫感謝祭 当日の様子。収穫したものを子ども達も一緒に調理して皆さんに振る舞ったそうです。

 
まだまだこれからなんですが、
年に一度は地域の人を施設へ招くことを試みています。
3年目になる今年は、小さな畑をしていることもあり収穫感謝祭をしました。
施設自体の規模も小さいので、少人数しかお招きできない状態ですが…。
少しずつ、地域に受け入れてもらえるように努力していきたいと思っています。
そして施設の子達はみんな、他の子達と同じように…毎日楽しく頑張って暮らしているんだということを、地域の皆さんにも知ってもらいたいなと思っています。
 

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―丸目さん、ありがとうございました。
 
ここで暮らす子達は、ごくふつうの元気な子ども達です。
毎朝起きて、学校へ行き、勉強し、遊んで、ごはんを食べて…
皆にそれぞれの人生があるように、特別でも何でもなく
ただここの場所で育ったというだけのこと。
職員の方々の懸命な姿勢や、優しいまなざし、子ども達の表情を見ていると、
むしろここでの経験は、それから先の人生で大きな糧となるんだろうな~
と感じます。一生懸命に生きる子ども達、職員の方々、そしてこの神武の家を拠点に、これからも明るい笑顔いっぱいの豊かな日々が巡りますように…!

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