NPO法人 咲桃虎(さくもんと)

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右から山下さんのお母様、山下さん、副理事の内村さん。さっと並ぶお利口さんな犬たちと一緒に!

高原町広原地区に拠点を持つNPO法人咲桃虎は、殺処分される犬猫の保護活動をしている団体です。代表理事である山下香織さんは、本業である美容室を営業しながら犬猫のお世話やレスキュー(犬猫の引受け)に各地へと走る多忙な日々を送っています。

ことのきっかけは14年前、当時山下さんが住んでいた東京の職場近くにあったペットショップにいた一匹の犬との出会いでした。長らく売れ残ってしまいブリーダーに返されるところを、自らが引き取ったことを機に、ペット業界の仕組みを調べ始めたといいます。

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山下さん:「地元に帰ってきて、犬が欲しいという知人が保健所に連絡した際に“犬はいません”と言われていたけど、その背後でワンワン聞こえていた。今となって分かるのは、“譲渡できるような犬がいない”と言う意味だったんです。それから少しずつ保健所に通うようになり、餌を寄付したり犬小屋の掃除を手伝ったりしていきました。

保健所側は譲渡後のフォローまでできないから、飼いやすい子しか譲渡しないんですね。難しい子(吠える・噛む・大型犬)から結局殺処分になっていく。そういう子達を救わない限り、殺処ゼロにはならない。じゃ自分がそういう子達を引き取ろうという気持ちになり、犬の特性を勉強しながらトレーニングをしていきました。

噛みつく理由は主に恐怖心からなんです。とりあえずそっとしておくことから始めて、少しずつ声かけしながら人との生活に慣れさせていく。【怖かったら私の後ろに隠れなさい】ということを長期戦で教えていったりもしています。噛みつかせないように人間がコントロールしていくことで、心が整っていくんですね。」

 

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毎週各地へレスキューに向かうという山下さん。

九州県内はもちろん、去年は岡山や島根まで。そして奄美まで救出しに行ったという犬は、ゲージの中で小さな身体をブルブル震わせていました。元々犬猫に対する思いが強かったのですか?と聞くと「全然フツーです。普通に捨犬とかいたら拾って帰りません?よく拾って母から怒られていました(笑)」との返事。自然な流れでその時々の物事に向き合っていたら、いつの間にかこうなっていたと話します。

 

いつも自分に置き換えて考えている

山下さん:「昔は保健所職員さん達とよくケンカしてました(笑)生き延びさせようという気持ちが少ないように感じて。けど今ならあの人達の気持ちもわかるんです。処分になる動物たちに情をかけると辛くなりますよね。

保健所に自らの飼犬を連れてくる人もいるんですよ。老犬になり夜鳴きがひどいとかの理由で。そういう人間もいるから、ただ動物達の命を救っていくだけではいたちごっこだなと。飼う人間の方もどうにかしていかんといかんと思って。人を変えるのは難しいけれど、時代が変われば人の意識も変わってきたりしますよね。そして先に子ども達の意識を変えれば、大人たちの意識も変わってきたりするから、啓発活動にも力を入れているところです。

私はいつも自分に置き換えて考えてしまうんです。自分だったら辛い、嫌だとかね。だから譲渡先に連れて行っても、ここには置いて帰れないと思うような環境であれば、そのまま連れて帰ります。もちろんもらってほしいんだけど、一番はこの子たちに今より幸せな生活を送ってもらいたいから。」

 

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自宅室内には保護された犬や猫が数匹。人との生活に慣れることから始めます。

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シャンプーして毛を整えてもらって…とても気持ちよさそう。

 

毎週日曜日には咲桃虎での譲渡会を行い、数え切れないほどの命を救ってきていますが、譲渡されない犬猫は常時100匹を超えており、猫は家一軒分ボランティアの方が住込でお世話しているのが現状です。

「近所の方々にも迷惑をかけていると思うけど、目をつむってくれているので有難い。咲桃虎で一緒に協力してくれる人達も、犬猫のために純粋に、自分が出来ることを進んでやってくれている。それぞれが互いにフォローし合えているからこそここまで活動できている。」と山下さんは話します。

 

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人も動物もおんなじ。家族として最後の時まで一緒にいてほしい。

 

山下さん:「特に相手が生き物だし、何でもそうですが、教科書通りには全然いかないし、動物が好きというだけでは続かない。まずは犬の糞を拾って、掃除して。ここにくる子達は難しい子が多いから、どうしてあげたらいいのかという事から始まります。

ペットを飼う際は、もしいなくなったら必ず探してほしいし、増やせないのであれば避妊去勢手術をし、最後の時まで家族として一緒にいてほしいです。婆ちゃんたちも『最後は家で死にたい』って言うでしょ?人とおんなじで、どんな子でも家が好き。つながれっぱなしは嫌だし、散歩にも行きたいしね。」

 

昔はよく捨てられていた犬猫も、最近は減ってきているそうです。捨てる行為が犯罪にあたると周知され、飼う人のモラル・意識が上がってきているのを感じるといいます。

山下さんの今の夢は「猫の自然保護施設を作ること。サファリパークみたいな!」

終始明るく元気に話す様子を見ていると、きっと実現されるだろうという気がしてきます。命との向き合い方…様々な考えもあるし、綺麗ごとではいかないこともあります。けれど普通なら目をそらしたくなるような現実に、真正面から向き合い行動されている姿は、闇に射す一筋の光のように眩しい。こんな世の中だからこそ、目に見えないものを大切に。心を失わずに生きていきたいと思うのでした。