合同会社 米夢

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10年前に鹿児島市から移住された追立隼嗣さんと、プロの米農家である有水耕治さん。お2人によって設立された会社「合同会社 米夢(まいむ)」では“特別栽培米”(※農薬・化学肥料の量が通常の栽培方法と比べて50%以下に抑えて作られたお米のこと)の生産・販売をしています。
少しずつ販路を増やしていく中、最近では「きりしまのゆめ」として商標を取り、ブランド化に向けて動き始めているということで…今後の展開が期待されるところです。
 
そしてお二人は家族でも親戚でもない、全くの他人同士。
一体どういう流れで一緒に米作りをするに至ったのでしょうか?
まずは鹿児島でのサラリーマン生活から一変,、農業を始めた追立さんにお話を伺いました。
 
―何がきっかけで高原町へ移住されてきたのでしょうか?
 
追立さん:最初は近く(高崎町)にいる親戚が経営しているきのこ園で農業の勉強をしようと来たんです。そのうちに高原町にある杜の穂倉で仕事をするようになりました。鹿児島でサラリーマンとして働いていましたが、自分には合わなかった。今思うと(サラリーマン時代が)楽は楽だったんですが…、妻の理解も得て移住し、もう10年農業に関わってきています。
こっちへ来てからは、せかせかしていた性格が落ち着いてきました。好きな事をしているのもあるけれど、自然の中で仕事をすることが、やっぱり自分には合っています。
この辺の人達も皆ゆっくりしていて親切ですしね。
 
そうなんですね。これまで農業に関わりながら、自然の中に身を置いてみて…
実感として、どうですか?
 
追立さん:大変は大変ですよね。サラリーマン時代は時間や人間関係、ノルマに追われる感じでしたが、今はこちらの思い通りにならない・出来ない “自然” が相手ですからね。
一生懸命やるんですが、自然環境に対して基本人間が出来ることは…限界があります。そこをどうやってうまく折り合いをつけながらできるのか、ですよね。
土地や自然に「生かされている」という感じなので、その辺が難しいと思います。

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―「生かされている」というのは 、自分が生かされているっていうことですよね?

 

追立さん:だと思います、そう感じます。土地があって作物が育ち、自分達はそれを収穫して生きていますもんね。水も自然の湧水なので、季節によって多少の差がありますから、思い通りにはなかなか…。

 

―思い通りにいかない、ていうのも結構な学びですよね。私は子育てを通してそれを実感しましたが… (笑) 

 

追立さん:そうですよね。自然を前にしての無力感というか、本当に自然の一部なんだなと思いますね。生かされていること、感謝の気持ちが実感としてすごくあります。今は自然の中で暮らせていることがいい。サラリーマンに戻りたいとかは全く思わないですね。

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会社周辺の景色。霧島山の下に広がる田園風景が清々しい。

 
現在、家族4人で暮らす追立さん。高原町で6次産業を学ぶために仕事をしていた最中、米農家であった有水さんの学習塾に娘さんを通わせ始めたことがキッカケとなり、二人は意気投合。「そんなに農業が好きなら一緒にやらないか?」との有水さんの誘いを発端に、二人で会社を立ち上げる運びとなります…。
後日、有水さんにもお話を伺いました。
 
有水さん:自分の子ども達はそれぞれの道で自立してる中で…これから先のことを、どうするかな~と考えてはいたんですよね。
“会社組織をつくりたい”という気持ちはずっとあったんです。そうすれば、自分に何かあった時に嫁さんを食べさせていけることはできる…というのがあったから。
 
―そんな最中で追立さんとの出会いがあり、会社を設立という流れになったんですね。
 
有水さん:農業は、自分で計画してやっていけるところが良いんですよね。雇われて、ただ言われたことをしているだけだと面白くないから、互いに同じ立場でできるやり方でやりましょうと。僕にただ言われてやっても、農業の良さが分からないですからね。

 

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―お互いを尊重し合いながら、一緒に仕事されているんですね。

 

有水さん:うん、すごい子やから…あの子は本当にいい子だからですね。うちの子ども達もすごく感謝しています。“追立さんが来てくれて良かった”って喜んでいますよ。戦後開拓で親父が開いた土地だから、潰したり、他人に渡す…というのはやりたくなかった。土地を売る、というよりも貸すという形が精いっぱいだなと思っていたんですよ。だから会社を作って、会社に土地を預けるという形を取れば、土地を売らなくて済むかなと思っていますけどね。今は二人でやるにも手が足りないほどになってきているので…経営的にはそんなにいい訳ではないですけど。

 

―いい形で道が開けてきているんですね。“合同会社”ということですが、お二人の役割がそれぞれあったりするのでしょうか?

 

有水さん:そうですね、どういう風に販売しようかとか、常に一緒に相談しながら何でもお互いに意見を出し合って進めています。自分としては、これからは彼がとにかく中心になっていかなきゃいけないから、ゆくゆくは新しい機械をいれて、自分はサポートに回るような感じにしていきたいと思っていますね。

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―追立さんと、有水さんご夫婦。ありがとうございました。

 

これからも高原で米づくりをしていき、お米を柱にして6次産業にも取り組んでいきたいという意気込みの追立さん。ただ現在、人手不足なのだそうで…農業の好きな方、興味のある方に是非来て欲しい!ということでした。
 
縁…って不思議ですよね。お二人共最初は全くの他人同士でしたが、ふとしたキッカケで出会い、そこから深い信頼関係を結ぶまで…そんなに時間を要していないように見えます。それがお互いにとって、まさに偶然であり必然だったというような物事の自然な流れの中、互いに協力し合いながら夢実現のために日々奮闘されています。
物腰柔らかく優しげなお人柄ですが、実はしっかり者で真の強い追立さんと、経験豊富な広い心と包容力でどーんと構える有水さん!といった感じで、とてもいい雰囲気のお二人。
そんなお二人が夢を持って一緒に進んでいく様子を見ていると、きっといずれまた素敵な縁が広がっていくんだろうな~という予感がしてくるのでした。
 

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