おてらんば展望台

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 「どう?この景色。私はおてらんばマチュピチュと呼んでるんです」
と嬉しそうに微笑むのは、展望台の発案者である小久保幸一さん。役場職員を退職後、観光協会勤務等を経験し65歳から鹿児山地区の区長を務めています。

高原町を鼓舞するようなことがしたい!”と「感動・歓声・感嘆」をキーワードに、アジサイロード作り、地区の高齢者見守りとしての黄色い旗活動等、最近では景勝地を生かした「おてらんば展望台」を立ち上げました。

 

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梅雨気分を優しく彩る アジサイロード

野尻方面から町内へ続く道沿いに植え付けられた紫陽花群。
運転の傍ら、しとやかなその姿がふわっと目に入ると、梅雨の鬱々とした心も優しく和んできます。これらは全て4年前に美郷町から貰い受けた枝を挿し穂した賜物。1300本から始まり、その後も毎年挿し穂を続けて現在は2000本。最初は数名程度だった協力者も、花が増えるとともに今年の草刈作業では55名もの方が集まりました。「人に何かを強制したところでうまくいかない。皆の心が変わってきたんです。そういうプロセスを大切にしたい」と話す小久保さん。
県の土木事務所が毎年8月に行う草刈りも、今年は6月に時期を早めてくれた。紫陽花がきれいだから…と配慮してくれたのかもしれない、と目を細めます。地元住民の方々の心で彩られたアジサイロード、また来年どんな姿を見せてくれるのか楽しみですね。

 

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展望台で景色を眺める小久保さん。「うちの嫁さんは、“もうこれ以上何もしないで”と女性独特の感性で言うんですねぇ」

 

おてらんば展望台
 
岩瀬川を眼下に一望できる高台にある「おてらんば展望台」は、高原町野尻町を結ぶ梅ヶ久保街道として賑わった場所にあります。当時、旅人が休憩してお茶を飲んだと言われている「御茶屋場」(おちゃやんば)という地名から名付けられました。

小久保さんの幼少期にはまだ見晴らしよくみえていたこの景色も、最近では山の斜面の樹木が大きくなるにつれ見えなくなってしまい…そんな記憶と共に薄れかけていたこの場所と再び向き合うきっかけとなったのが、一枚の古い写真でした。去年8月に20年前のおてらんばの写真を偶然目にする機会があったのです。

 
小久保さん「その写真を見て、こういう景観を見られないのはもったいない!と、すぐ土地の所有者に了承を得て翌9月から斜面を切り開き始めました。そうして行動していると、樹を切る人や整地する人‥地元の方々がほとんど無償に近い状態で協力してくれたんです。」

その後、町からの補助を受けて桜やハナミズキ等を植樹。展望台の情報を知った高原町内外の方々から紫陽花等の寄付があったり等、どんどん彩りを重ねていくおてらんば展望台。美しい景色をゆったりと眺めて愛でる…自然豊かな町ならではの贅沢なひとときではないでしょうか。

 

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駐車場から降りて奥に進むと、景色を一望できる休憩所があります。植樹された樹々の成長とともに展望台の進展が楽しみですね。

 

0から1へのエネルギー 
 
このような活動を続ける小久保さんが感じるのは「人のつながり」の不思議。自分が動き始めて、最初は外から眺めるだけだった人達がそのうち仲間に加わり、どんどん人の輪が広がり形になっていく。
 

小久保さん養老孟司さんのベストセラー「バカの壁」の文章にこんな言葉があったんです。“物事を起こす時は、0から1へのエネルギーが一番必要”と。
人から何を言われようが何とかスタートして、0が1になった時。そこからは2、3、4‥とその後の後押し、玉転がしのように皆で力を合わせて‥あとはもう速いんですよね。
そして僕は他人に強制は100%しないし、他がやっているからやる、ということも無い。ただ地域にある特性を再構築したりして引き出していけばいいわけですから。一石を投じた輪立ちの原点が鹿児山地区になればいいなと思っているわけです。」

 

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玄関先に毎日旗を掲げることで安否を確認する「黄色い旗」の活動は、高齢者の「無縁」「孤立」を防ぐため。誰もが気軽に声を掛け合い、そっと見守り、必要な時は助け合う地域づくりを目指している。

 

高原町を盛り上げたい”その一心で行動されている様子を見て、その原動力を聞いてみると「なんで、悩むことがあろうか~!そのうちに…と言ってると、延々と引きのばして、そのうちに墓標が立つ。というんですよ」と笑います。
「あぁ、、そうですよねぇ」と“そのうち”を日々乱用しているような私…撃沈でしたが(泣)本当にそう、何もせずただやり過ごすより、行動して失敗でもした方がまだ得るものがあるんですよね。小久保さんの瞬発力を見習って、いつでも行動できるように心を整えていこう…!と思うのでした。