井ノ上工房

 

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狭野神社の脇にある道沿いを行く途中、ふと目に入る手作りの看板。手前にあるご自宅の奥を進んで行くと、家具製作の工場、ギャラリーがありました。
 

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“ぎゃらりい”の中へ入ると、ふわぁ~っと、いい香り~!!
すぅーっと深呼吸したくなるような…木のアロマ、それぞれの香りが漂います。
 
「お客さんにも香りの事言われるんだけどね~、僕はもう慣れすぎてよく分らんのですよ」と笑う、ここの店主・家具職人の井ノ上 弘海(ヒロミ)さん。
 
元々狭野出身である弘海さんは、家具職人としての経験を重ねたのち平成元年に狭野でこの工房を立ち上げ、現在は奥様の由起子さんと一緒に日々家具作りに勤しんでいらっしゃるそうです。
 
 ―家具の仕事、何年くらい続けてらっしゃるんでしょうか?
 
 弘海さん:この仕事はもう…45年位かな。こういう場所でやっているから狭野神社や温泉へ来た人が見に来てくれたり、宮崎から来る人が多いですね。
リピーターもいるし、鹿児島や熊本の方も時々ね。まぁネット販売とかはしないので広がりは…だけど一人で出来る分しかできないからね、楽しめる範囲がいいんですよ。 
 
―材料はどうされているのですか?
 
 弘海さん:木は主に硬い木、広葉樹は都城市の材木屋さんで仕入れています。家具として日常的に使う際にエアコンやストーブなんかの影響も受けますから、しっかりと乾燥させた木材であることが一番ですね。
もちろんメンテナンスもします。家具の横でストーブ焚いたりなんかして、大変なことになったこともありますし(笑)
木は、生きていますからね。
ムチャなことしたらバリっと割れたりもするし。
 
―いきものとして付き合っていく感覚でしょうか、いいですね。愛着も沸きそう…
そんな手作り家具の魅力を伝えるとしたら、何でしょうか?
 
弘海さん:家具は部屋に置くだけで癒しになる…というかね。
ひとつひとつが、木目も違うし、桜の木なんかの特徴でいうと虎模様が入るんです。見る方向でいろんな変化が出る良さもあるし、何より自然のものですからね。そういうところに、木目のシートを貼ったような家具にはない良さがあるのかな…と。
由起子さん:来た人が言うもんね、“やっぱり木はいいね~”って。
 
―そうですね。大量生産のものとはまた違った、一点ものの魅力がありますよね。
 
弘海さん:木の家具は、傷が入っても削ったりすればまた元通りになるんですよ。
だから何十年も使える。長い目で見たらエコなのかな、と(笑)
そして(人に)もらってもらえるような家具じゃないと…いい家具は誰かがもらってくれますから。そんな風に後々のことまで考えて買ってくれるお客さんもいて。
 

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弘海さん:狭野神社の神様の道具も、木製のものは殆ど作っていますよ。
最近は石灯篭の小さな窓を全部変えました。
 
―えー、すごいですね!神様の場所のお手入れ…
弘海さん:いえいえ、知り合いですからね。木で作るものは何でも、作りますよ。
 
―やっぱり好きなんですね、作ることが。
弘海さん:仕事だからですね。
由起子さん:頼まれたら嫌とは言えないんですよ(笑)
 

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工場内の壁にずらりと並ぶ道具の数々。右は今頼まれて作っているという猫のツリーハウス!
 
―最後に…この地域のご出身だということですが、たかはるの魅力や感じることなどありませんか?
 
弘海さん:狭野に住んでますが…段々と若い人が減っていますからね~。
自分が若い頃に比べると時代も変わっていくのを感じます。
若い人達の雰囲気も変わってきているしね。
郷土芸能や祭りもあるし…実際住み始めてみると難しい面もあるとは思いますけど、地域としては移住者や若い人達が一人でも来てくれるといいですよね、本当に。少しでも地域が明るくなれば…。
 
―移住者としても、受け入れてくれる人がいるだけでありがたいというか…温かい人も多くて良かったです。自然環境もいいですしね、なるだけ自然に近しい場所で子育てしたいな~と思っていたので。
 
由起子さん:うん、それはありますよね。神社も温泉も近いしね、空も広いし(笑)
弘海さん:霧島連山のすごい景色とかね…高原町が一番きれいに見えるから。
人の少なくなっていく寂しさもあるんですよね。だけど最近近所で子供の声がやっと、何年かぶりに聞こえるようになってね~。うれしいですよ、やっぱり。
 

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弘海さん、由起子さん、ありがとうございました。
 
実は今回突然お店へお邪魔したのですが、入るとすぐ「あ、どうぞどうぞ~。よかったら見てみて下さい」と案内して下さり…自然体でとっても気さくなご夫婦でした。
ぎゃらりい内に並ぶ家具たちは、シンプルで優しい表情。丁寧に作られているのが伝わります。こういうのが欲しい…など希望に応じてオーダーメイドも受け付けているそうです。
 
「インターネット販売はしないんです、直にみて触れてみてから購入してほしい」
という弘海さん。手をかけ時間をかけて丁寧に作った“生きた家具”だからこそ、その行く先まで想いを込めて作られています。直に触れてみてから決めてほしいというのも、作り手としてはごく自然な気持ちの表れ。ネットで写真を見ただけでは分からない、実際に触れた感じや木の香り、その存在感をまるごと確かめてから決めてほしい…。
 
今でこそ何でも安く簡単に手に入るようになりましたが、それはどうしてなのか?
どんな方法で安く作られているのだろう。私も“手頃なものがいい”と思ってモノを買うことが多いですが、その向こう側の景色まで見えてくると、少しずつ手にするものが変わってくるのかな…と、モノの見方についてふと考えさせられました。
 
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