甲子園食堂

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地元の人に長く愛されてきた甲子園食堂は、ボリューム満点の美味しい定食屋さん。
そこに名物おばあちゃんがいるということで、お昼時におなかを空かせていざ食堂へ…
お店に到着し店内へ入ると、いい感じのアットホーム感。
意外と広い奥行に視線を移すと個室があり、たくさんの靴が並んでいます。
厨房の様子は見えませんが、中で静かに忙しく働かれている様子が伝わってきます。
 お忙しい所すみませんが…ちょっとお声かけして、お店の人気メニューだというから揚げ定食を注文しました。
 

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そこまで待たされることなく運ばれてきたのがこちら。
THE・定食という感じで、とっても美味しそうです。
結構なボリュームで、お客さんに働き盛りの男性陣が多いのもうなずけます。
いただきます~、とおばあちゃんの手が空くまでしばしランチタイム。
 
「さて、なんの話しよかね」
こちらが食べ終えるころに厨房の仕事が落ち着き、よいしょっと向かいに腰かけて
くれたおばあちゃん。
 

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お名前は神田佐喜子さん。なんと今年で95歳!
50年前からこのお店をずっと続けておられるそうです。
今は娘さんと、その息子さんのお嫁さんの3人でお店を切り盛りされていて
もちろん、サキコさんも現役で厨房へ立ちます。
「まだ料理は間違ったことないからね!」としっかりした口調で話すサキコさん。
朝8時頃からお店へ出向き、宴会があると夜10時頃まで立ち仕事…すごいですね。
お元気そのもの、ご立派です…!
 
サキコさん:眼鏡も掛けずに暇さえあれば新聞を読んでるよ。
朝仕事の前に一度目を通しておいて、小さい記事は合間に読んでる。
仕事が好きだからね。昔…最初は呉服屋だったんですよ。
昔は駅前で交換会といって日本中の卸しやが集まって買いに来てね。
けれどそのうち呉服屋もね…、なんもかも変わってきているからね。
そのころから若い人達が(食堂する前から)うちでご飯食べたりしよったから
これはもってこいだって、そこからお店を始めた。
 
―そうでしたか…。さっき頂いた定食もすごく美味しくて。
梅干しも手作りでしょ?全部美味しい。
 
サキコさん:料理はまごごろじゃと言うてね。
私は、料理には真心がこもってないと、よか料理は出来ないといってね。
考え事とかイライラしてたりしてたら、やっぱり料理に響くでね。
人の命に関わる商売だからね、間違ったことをしたらそれこそ大変だから。
 
昔下宿をしていた時の子供さん達がいてね。40年近く経った今でも、盆と正月には必ず贈り物をくれる人がいるの。その子供の親がね、毎年欠かさず送ってくれる。
その子は当時、宮崎から高原町役場に3ヶ月だけ研修にきた人でね、
ごはんだけはここで食べて、寝泊まりは駅前の山本っていう食堂でしていた。
その子は今多分長崎にいるのかな、この前ひょっこり来てよ。
その息子は知らんとよ、お母さんが贈り物をくれていることを。
ただ当時、自分の親に「おばちゃんが丁寧にしてくれる…」って話はよくしていたみたい。子供の恩を、ずっと親が返してくれている。今年も送ってくれたよ。
 
 “3ヶ月間の恩。それを40年以上ずっと、その子の親御さんが返している
 
その話を聞いて、はーっと言葉が出ません。なんと深い感謝でしょうか。
そんな中、お昼を食べ終ったお客さん達がぞろぞろとレジへ…
 
 
客:ごちそうさまでした~!
あ、昨日の分払っちょらん、合わせて1250円ね!
サキコさん:はい、ありがとね。熱射病にかからんごね~
客:うん?熱射病ね(笑) ここでよかもん食べてかんばるわ!
 
(お客さんが引いた後に…)
サキコさん:遠慮がないからね。お金持ってきちょらん!ていえば
よかっちゃが~てね。
 
 
サキコさんが幾度か口にする「遠慮がないからね…」というのが何故か心にかかります。ふっと感じる懐かしいにおいのような…体温を感じる言葉だなぁ~。
ここに居ると、そんな温かい気配がどことなく漂います。
いい感じにゆるんだお店の雰囲気に、サキコさんとの会話や、
そこで交わされるお客さんの声、真心のこもった美味しいごはん。
何気ないことのようだけれど、大切なことに気づかされる…
やさしい時間を過ごさせてもらいました。
 

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「まぁ年々人は減って来てるけど、その間仕事が出来るってだけでも幸せだと
思って…」と、サキコさんに目をやりながら話す娘さん。
そうですね、サキコさんが元気でいるだけで、周りも元気になるし、笑顔になれる。
それだけで充分しあわせというものですね。

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