「百聞は一見に如かず」 視線入力体験会

先日、みやびproject 岡元 雅(まさし)さんによる「百聞は一見にしかず」~視線入力の世界~というイベントが行われました。
 
視線入力…と聞いて、何をイメージしますか?
視線入力とは、パソコン画面に表示されている文字を目で見ることにより、その文字の入力ができるシステムのこと。主に重度肢体不自由者のコミュニケーション支援装置として開発されてきたそうです。
 
声がでない、身体・手足が動かない。
けれど頭は働き、目が見えたとしたら…。
実際に身体の不自由な方や、難病を患っていらっしゃる方、突然の事故などで重篤な状態の方など…。意思疎通が難しい状態で困っている方々の、救いの光になるような、生きる希望になる手段だと思います。
 
高原町広原地区で暮らす岡元さんは、徐々に筋肉が衰えていく難病、筋ジストロフィーと診断を受けながらも、九州東海大学でコンピューターの基礎を学ばれて、卒業後は高原町に帰郷。現在は、自身が重度障がい者であることを活かして色々な事に挑戦されています。
情報発信する個人プロジェクト「みやびproject」も開始し、ご本人も普段から活用中である「視線入力」をより沢山の人に知ってほしいとイベントを企画されています。
今回は音楽の演奏会の後に、視線入力を使ってのゲーム体験会…という流れで、会場にはたくさんの人達が集まっていました。そのイベントの様子をお伝えします。
 

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 《以下、雅さん》

 みなさんこんにちは!
今日はお集りいただきありがとうございます。
ぜひ楽しんでいってもらえたら!と思っています。
視線入力体験会ということで…その前にちょっとだけお話を。
皆さん、今はケガとか病気とか関係なくても、もしかしたら将来なるかもしれないし必ず歳は取るので、ゆくゆくはドコソコに不具合が出てくると思います。
その時にちょっと思い出してくれたら…。あぁ、こういうのがあったなって。
役に立てばいいなと思い、今日は身体の不自由な先輩として
皆さんにプレゼントの意味を込めてつくってみました。よろしくお願いします。
 

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 まず、この絵を見てみて下さい。とても綺麗ですよね。
この絵はALSという病気の方(※榊 浩行さん)身体が動かなくて呼吸器を付けていて
声も出ないという状況なんですけど、その方が視線入力だけで描いた絵なんです。
(会場どよめき)
Facebook上でこの絵を紹介させてくださいとお願いしたら、いいですよと快諾してくれました。こういうやり取りも視線入力があるからできるということです。
視線入力によって、こういう絵も描けるということを分かってもらえればと思って。
 

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 視線入力というのは、目でみて、パソコンなどを操作するということです。
先日亡くなられた「車椅子の物理学者」としても知られるホーキング博士ALSという難病でありながら視線入力などのテクノロジーを駆使して、世界で活躍されました。難病と言われても絵が得意な人が、普通に腕が動く一般の人よりうまく描くことができます。視線入力には色んな可能性を感じてもらえると思います。
そんな視線入力装置、使ってみたいと思いませんか?
 
でもそれってお高いんじゃないの、と思うでしょう?
確かに昔は一式そろえるのに100万超えていて、ごく一部の人のものでしたが、
…今はなんとAmazonなんかで2万弱です!() 
こういう装置とパソコンさえあれば、簡単な操作はできるようになっています。
ただいきなり重度の障がいで困っている方に、それを設置してやったとしても難しいんですね。必ず失敗してしまう。
なのでちゃんと調整して失敗させない、ということが大事なんです。
 

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僕らは日々諦めの連続なんでね。ああ、って初めに失敗してしまうと
これもダメか…ってすぐ諦めてしまうんですね。
けど視線入力というのは、ちゃんと設置して訓練すれば、もしかしたら諦めるのには早くて。可能性があるのに、諦めてしまうのはもったいないなと。
だからまずは簡単なゲームから少しずつ慣れて行って、ゆくゆくは文字打ちなどを覚えたりしたら、友達とラインしたりとか出来る可能性はあるかなと思います。
まずは支援する人が覚えて、マスターしてからやるということが大事です。
最初はまず簡単なゲームから、まずは失敗しないことから、楽しみながら…。
一般の方でも十分便利で役に立ち、そして楽しい視線入力。
是非皆さんも、やってみてください。
 
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雅さんのスライド後は、皆でゲームをやってみよう!と体験会が始まりました。
いきなりやって、諦めないためにもまずは楽しく簡単なゲームから^^
「わー、面白い!!」と大人も子供も、皆さんニコニコで楽しんでいらっしゃいました。サポートする家族にも、まずはやってみてほしい!と雅さんは言います。
何事も体験しないと分からないですもんね。
 
「小さな子供に、いきなり大人用の自転車に“乗れ”って与えても難しいですよね」
と例える雅さん。何でも少しずつ、段階を踏んでステップアップしていくもの。
私も視線入力での文字打ちを体験させてもらいました。
ただ画面上の文字を目で追えばいいのですが、中々、視線の微調整が難しい…。
けれど、その後に自分の目線の位置合わせの設定をすると動きがスムーズに!
とても素晴らしい技術だと感じました。
最初にちゃんと設定して、慣れるまではゲームなどで楽しみながら…と根気よく続ければ何とか文字打ち出来るようになってくる、そんな実感がありました。
そしてそこから先には、様々な可能性が広がっています…!
 

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 “福祉の話…となると敷居が高いので、音楽聞いたり遊んだりして気楽に楽しんでもらいたい” という雅さんの気持ちが伝わってくる、楽しい雰囲気のあたたかなイベントでした。
そしてこのイベントのご縁がきっかけで、家族に使わせてみたいという方の相談を受け、宮崎市内のお宅へ視線入力のアドバイスへ伺うそうです。近辺でも困っている人が結構いると思うので、サポートしたい…とも仰っておられました。雅さんは自身でサイトも運営されています。  みやびproject
 

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ゲーム大好きな雅さん!ご自宅で普段しているゲームのことを教えてくれました。
 
実際、こういったテクノロジーは様々な方々の生きる希望です。
医者から“意識がない、何も出来ない”と言われていた子が、視線入力を通して風船割りゲームが出来た…!という事実から “わかっている” ということが分かり、本人はもちろん、周りの人や家族も変わっていった…
という素晴らしい例もあります。こういった奇跡が世界中で起きているのです。
 
とにかく、“知らない”というのが一番もったいない。
まず、こういった可能性の存在を知ることが大事、と雅さんは言います。
そして困っている方々はもちろんですが、周りの人達から体験し、知ることだけでもいろんな可能性が枝分かれし、広がっていくと感じました。
雅さん、ありがとうございました。
これから先も雅さんらしく、楽しみながら素敵な時間を沢山過ごして下さいね。
 
《以下、雅さんからのコメントです^^⇩》
視線入力などについて詳しく知りたい方はみやびProjectブログへのコメントやお問い合わせ、Facebook(岡元 雅)などで声掛けてください。
医療福祉、支援教育関係者など、より詳しく知りたい方は体験会でも使用した風船割りゲームの開発者 島根大学伊藤史人助教の主宰サイト「ポランの広場」も合わせてご覧ください。みやびProjectもこのサイトで勉強させてもらっています。
 

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最後に…文中で紹介した榊さんの絵です。
これらの絵は視線入力を使い、Windowsの標準ソフト「ペイント」で描かれたそう…!美しいですよね。
絵から伝わるあたたかさ、まっすぐな心に魂が癒されるような気持ちになります。